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AIニュースレター、53号です。
今回は、「人にどの程度厳しくするべきか」について考えていきます。
私たちが人材育成の依頼を頂く時に、「できるだけ厳しくしてほしい」というリクエストを受けることが良くあります。難しい課題を出したり、「今のままではだめですよ」と強いメッセージを出したりして、「危機感」を醸成するというアプローチです。
これはいわばイソップ童話の「北風と太陽」における「北風」です。びゅうびゅうと強い風を吹き付けて、旅人のコートを脱がせようとするのと似ています。
こうした「厳しさ」のアプローチは、人材育成においてはある程度必要です。なぜならば、人は弱い生き物ですから、今までのままでいいやと思ってしまったり、ついラクな行動を選んでしまいます。私も含めてほとんどの人はそうではないでしょうか。「危機感」は人が変化するうえで欠かせない要素です。

しかし、「北風と太陽」のイソップ童話では、北風はコートを脱がすことはできませんでした。
北風がどれだけ強く吹き付けても、旅人はよりしっかりとコートを押さえつけてしまいます。本人の同意がない限り、むりやりコートを吹き飛ばすことは難しいのです。
こうした「強制的な変化を拒否したい」という側面は人間には必ずあります。そこを理解せずして人を育成することはできません。
童話では、ポカポカと旅人を照らした太陽がコートを脱がすことに成功しました。人材育成における「太陽」とは「相手を認めること」です。
人は、「変われ」と言われても「わかりました」とは簡単には言いません。そんなことを言われても嬉しくないからです。
変わるためには「エネルギー」が必要です。エネルギーとは、周囲からの信頼や期待、温かな関係性、わくわくするような目標などから生まれてきます。「自分から」変わろう、変わりたい、と思える理由をいかに作れるかが変化を生むポイントです。
私は、部下の育成に悩む上司のコーチングをすることがありますが、よくこういう発言があります。
「私は、彼に変われとずーっと言ってきた。だけど、彼は一向に聞き入れないし、いつまでたっても変わらない」
こうしたシチュエーションは「北風」が逆効果になっている典型的なパターンです。「変われと言っている“のに、変わらない」のではなく「変われと言っている“から”、変わらない」かもしれないのです。
自分が変化のモチベーションをむしろ削いでしまっていることに気づけない。我々リーダーが陥りやすい落とし穴と言えるでしょう。

しかし、その順番は「太陽が先」であるべきだと思います。
まずは相手を信じて、その人の良いところを肯定してあげましょう。事前にしっかりと内省して、その人への信頼を自分の腹の中に落とします。心の底から、その人への肯定的な思いが伝わるような状態を作ります。
取ってつけたように褒めるのはダメです。見透かされてしまいます。相手と話す前に、自分の中で「嘘のない状態」を作れるまで内省しましょう。ここが一番難しいところであり、ポイントです。
相手に肯定的なメッセージを伝えたら、そこに加えて「プラスしてほしいこと」を伝えましょう。このように、「変わる」ではなく「加える」ということを提案することで、相手は少しばかり受け入れやすくなります。
逆説的な表現ですが、「認めることで、人は変わる」ということを理解しておくことが大切です。

「事実」をつきつけるだけではショックが残るだけ態度を変化させるための典型的な人材育成手法としては、「360度フィードバック」というものがあります。周囲からの声をアンケート形式で収集し、遠慮なく伝えることで本人に変化のきっかけを与えるものです。
こうしたいわば「ショック療法」も必要なことですが、それをつきつけるだけでは、これもやはり「北風」です。ショックに向き合うためのエネルギーを与えてあげないと、結果を正面から受け入れてはくれません。
アンケートの結果を活用して、「直接対話する」機会を設けるべきです。アンケート上では伝えきれなかった想いなどを、目を見て伝え合いましょう。そうすることで、本人の中でショックを受け入れる土壌ができ、変化するためのエネルギーが生まれるのです。
以上、今日は「北風と太陽」について考えてきました。
研修などの場でも、日々の上司部下の実践において、参考にしてみてください。
今回のニュースレターは以上です。お読みいただきありがとうございました!
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中村 勝裕(NAKAMURA KATSUHIRO)
CEO & Founder, Asian Identity Co., Ltd.
“バンコクを起点にアジアに特化した人事・コンサルティングファームAsian Identityを経営。
ネスレ、リンク & モチベーション、グロービスを経て現職。
現在はタイを拠点としながら「多様性の調和」をミッションに掲げ、アジア各国でのコンサルティングや講演活動を手がける。
バンコクにおいてタイ人向けビジネス漫画「Su Su Pim! (がんばれピム!)」を執筆、販売。
アジア流のリーダーシップを提唱する『リーダーの悩みはすべて東洋思想で解決できる』(WAVE出版)を出版。”
– Certified Facilitator of LEGO® SERIOUS PLAY®
– Completed ORSC™ – Organization and Relationship System Coaching Practical Application Course
– Certified Facilitator of Hofstede Insight Organizational Culture (วัฒนธรรมองค์กร)
– CoachingOurselves Facilitator
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