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企業インタビュー特集

企業インタビュー特集、第4回目は本年創業100周年を迎えた軸受(ベアリング)製造大手NTN株式会社のタイ拠点、販売機能を持つNTN Bearing-ThailandのMD後藤様と人事のChalermchai様にお話を伺いました。(以下敬称略)
「Proud of working at NTN」NTN Bearing-Thailandの社員として働くことを誇りに思ってもらえるような文化を創りたいと組織開発、人材育成に奮闘するお二方のご様子をお届けできればと思いす。
AI:まずは簡単に自己紹介をお願いします。
後藤: 大学を卒業して1991年にNTN株式会社に入社をしました。私は三重県出身なのですが、NTN の主力工場が三重県の桑名にあり、大学への通学時にいつもNTNの看板を見ていたことや材料工学を 専攻していたこともあり、あらゆる産業に使われている軸受に自分の学んだ分野が活かせるという意味で自然にNTNの入社を決めていました。当時はバブルで就職活動もそこまで大変ではなかったです。 入社後は静岡で自動車部品の研究開発を8年ほど経験した後、アメリカのデトロイトに4年駐在、そこから日本の設計部で10年間設計の仕事をし、タイには2016年の4月に来ました。今はタイNTN販売株式会社のMDとして計70名ほどの組織を見ています。
CHALERMCHAI: 国立大学の法律学部を卒業後、一 度法曹の世界で仕事をしました。弁護士や法曹の世界はフェアに仕事ができると考えていたのですが実際は異なり、自 分がおかしいと感じることも正しい方向に持っていくようにいかなければならない仕事が多く、違和感があったため法曹の世界を離れることにしました。その後、運よく人事という仕事に巡りあいました。日系企業やタイ企業で人事のスタッフとして経験を積んだ後、採用という領域の仕事を深めるべく、大手のリクルーティング会社で6年ほど勤務しました。人のことを理解することや人が何に興味があるのかを観察し、把握することに興味をもったので。その後、NTNの人事マネージャーとして勤めるようになりました。今は6年目です。

AI:後藤さんがタイの拠点に来られて、初めて組織を見て CHALERMCHAI さんとどのようなお話をされたんでしょうか。
CHALERMCHAI: 後藤さんが覚えているか分からないのですが、後藤さんが来て間もないころに「自分は組織 をよくするためにやりたいことがたくさんある」と直談判した記憶があります。
後藤: 覚えています。(笑)
CHALERMCHAI: 私が入社してからは、HRのシステムの整備やオフィスの移転など基盤を整えることに奔走しており、組織を強くすることや従業員の育成などに目を向けることができずにいました。後藤さんが来たタイミングでようやく色々と取り組める、と思って強く訴えかけたことを覚えています。増えすぎたポジションの整理やキャリアパスをイメージできるような評価や昇進の仕組み、人事制度の整備などですね。従業員教育もそうです。あとは各ポジションの採用の際に必要なコンピテンシーを決めて、それにそった質問項目を設計するなど。この採用の件は、まだ後藤さんに相談してませんでしたね。(笑)やりたいことが沢山あり、今後藤さんと相談しながら進めています。
後藤: 頼もしい限りです。(笑)
私が就任した当時、私の人材育成で大切にしてほしい考え方を伝えようとマネージャー全員を集めたことがあります。 13人いるマネージャーにある図を見せながら、部下の目線を理解できるような上司であってほしいというメッセージを伝えました。通常のピラミッド型組織では現場のスタッフが情報を上にあげる、ニュートンの法則にしたがうと重力の関係で頑張って情報というボールを上に投げないといけない。スタッフにとってそれはとても大変なことであると。情報が上がってこないのは部下のせいではない、と伝えました。マネジメント側の人間が自分と比較して 経験の少ない部下の目線まで下がって部下とコミュニケーションすることが必要だと伝えました。
あとは、「仕事は楽しくなくてはいけない」ということ。これは私のポリシーです。タイ語では「サヌック」です。サバイではないですよ。では、何が仕事を面白くさせるか、それは適切な目標設定と成功体験の積み重ね、この2つだと思っています。
CHALERMCHAI: 後藤さんはいつも、「会社の目標は、すべての従業員がハッピーになること」だと言ってます。そして仕事は楽しむもの。サバイではなく、サヌック。このような考え方が浸透しつつあり、従業員も気軽に意見が言えてアイデアを出してくれるように環境が変わりつつあるのを感じています。僕もこの考え方は好きですね。
後藤: 仕事が面白ければ、お客様への接し方も変わってきて業績はアップしていくと信じています。目標設定で大事なのは、個人の能力の+10%くらい、頑張って手が届くような目標設定をすること。 このような目標を達成し続けることができれば、仕事は絶対に面白くなります。また、部下に対して上司は部下の能力を見極め、部下が今の能力の+10%の目標を設定できるように指導する必要があります。あとは上司が部下の目標達成だけでなく、成功体験を積ませてあげられるような業務のアサインができるか、それが上司の役割だと思っています。
CHALERMCHAI: 人事面では、全ての取り組みが一貫して筋が通っているものを作りたいと思っていますし、それが僕のポリシーです。フィーリングだけで、あれをやろう、これをやろうとするのではなく、ひとつ取り組みをするにしても、なぜこれをする必要があるのかを徹底して考え抜き、実行するにしても、なぜこのアクションが効果的なのかを論理的に説明できることが大事だと思っています。例えば、なぜポジションを整理しなければいけないのか。それについても僕は目的と手段とメリットをちゃんと説明できます。

後藤: 昨年までパワーポイント研修など、実務面でのスキルを上げる研修が中心だったのですが、今年以降はマインドセットの従業員教育にシフトしています。販社なので、今一番取り組んでいるのは「CUSTOMER FIRST」という顧客第一主義というマインドセットの醸成ですね。顧客第一主義といっても顧客の厳しい要求にあっさり何でも答えるという意味ではないです。顧客と自分たちがどう WIN-WINの関係を築けるかということです。お客さんの言っていることの真の意図を理解し、お互いに納得いくような解決策を提示できる。ネゴシエーションとかも含まれますね。
CHALERMCHAI: 「CUSTOMER FIRST」がマインドとして身につくと、お客様からより選ばれる存在になると思います。「相手の心を自分の心に入れて考える」というタイの言葉があるのですが、相手の立場に立って考えるということ。電話一つとるのでも、お客様を待たせず、素早くとる、そんな当たり前のことが徹底できる組織であってほしいです。あとマインドセットとしてはポジティブシンキング、プラス思考、オーナーシップもありますね。
後藤: 私自身、実はネガティブな人間だったんですけどね。(笑)タイに来る前に設計部署に10年居たことがあって、基準の厳しい、ルール順守の環境に慣れていました。タイにきて、MDという立場で責任がありつつも色んなことにチャレンジしていけることにとても面白みを感じています。
AI:意欲ある人事のCHALERMCHAIさんですが、CHALERMCHAIさんに期待していることがあれば教えてください。
後藤: 一つは僕には言えないタイ人の希望や不満などを吸い上げてほしいということです。
彼の部屋に従業員が良く出入りして相談している様子を頻繁に見かけます。僕に全部言わなくていいのですが、本当のところを知っている、引き続きスタッフがアプローチしやすい存在でいてほしいです。そして、必要なことを考えて実行し、風通しのいい組織にしてほしいです。これが私の願いですね。
あとは、昨年、実はタイで初めて従業員満足度調査を行いました。従業員全員に対し、会社、上司、同僚との関係性や仕事、待遇など様々な観点で50ほどの質問を設計して会社や組織に対して思うところを点数で付けれるように、また記述できる箇所も設けて調査したんです。結果としてはおおむね良好だったのですが、やはりポジション、昇進制度などで従業員が何かしらの不満を持っていることが分かり、改善への取り組みを進めています。この取り組みを着実に一緒にやり遂げてほしいですね。
CHALERMCHAI: 従業員がアプローチしやすい人事として心がけているのは、マネージャーとしての帽子をかぶって、机に座っているだけの人事であってはいけないといことです。役職は役職として大事ですけど、意見を取り入れやすいように壁を作らずオープンでいる。そう心がけています。調査についても色々な意見を集約してやらなければならないことが明確になりました。改善に向けて着実に取り組みを進めたいですね。
AI:人を育てる、人材育成の面白さや難しさについて教えてください。
後藤: 「褒めると叱る」のタイミングです。フルネームが後藤司郎なのですが、褒めるときはSHIROさん、叱るときはGOTOさんという二つの人格が自分の中に内在していて、それぞれのタイミングで人格を分けるようにしているんです。叱るときは、今からGOTOさんとして事実を基に伝え方に注意して、ただ叱るだけではなくSUGGESTION(こうした方がもっとよくなる)ということを伝えます。褒めるときは、SHIROさんとして精一杯の笑顔で感謝を伝える。出来るだけ沢山SHIROさんが出てきてほしいです。
あとは、どうやればメンバーが自ら考えて行動するようになるか、ですね。タイ人はクリアで細かい指示を欲していると言いますが、こちらも1〜10まで懇切丁寧に教え続けるわけにはいかない。なるべくヒントを与えて自分の頭で考えさせるようにしていきたいですね。
CHALERMCHAI: 難しさというと、やはり従業員のマインドや態度に良い変化を起こすことです。私はかつて同じ組織で働くメンバーのマインドや行動の変化を目にした経験があります。かつてとてもネガティブで心を閉ざしがちで会社の行事にもなかなか参加してくれなかったメンバーがいました。ある日、そのメンバーが大きな事故にあってしまったのですが、私自身で人事としてできる限りのサポートをやろうと医師やご家族に連絡をとったり、会社として何かできないか精いっぱい考えてサポートしました。結果、そのメンバーは私を信頼してくれるようになり、仕事の相談、改善の提案など人が変わったかのように周囲と接するようになりました。そういった変化を見るのはとても好きですね。そういったポジティブな変化を起こしていきたいです
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