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ニュースレター第36号。コロナウィルスは少しずつではありますが抑制の方向に向かいつつありますが、依然として予断は許さず、また世界経済への影響はまだ入り口のようにも思われます。

これから数年間、企業は厳しい不況期と向き合うことになるかもしれません。企業のアクションも、新規投資、新商品、新規採用という攻めのモードから、コスト削減、商品や生産ラインの統廃合、人員削減、といった守りモードへの転換を余儀なくされるでしょう。
その際に、重要なのは「リーダのメッセージを伝える力」です。仮にリストラや工場閉鎖と言った後ろ向きな事実を伝えるとしても、伝え方が変われば、前向きなメッセージに聞こえます。今回はこの「メッセージを伝える力」に注目してみます。

先日、Airbnb が1,900人のレイオフをすると発表した。コロナショックが世界中の全ての業種に影響を与える中、「旅行」というものは最もインパクトが大きい業種の一つであることは間違いない。
今回、CEOであるBrian Cheskyが出したレイオフを伝える従業員向けのレターは、彼の苦しい心情が滲んだものだった。しかし同時に、随所に従業員への配慮が素晴らしく行き届いており、また、この逆風の中でもAirbnbがどのように進んでいくのかのビジョンも感じられる熱いメッセージだった。特に私が印象に残ったポイントを、翻訳したメッセージを紹介しつつ考察してみたい。
(興味ある方は是非オリジナルをお読みください。以下、抜粋パートは当方の拙い翻訳となることをお許しいただきたい)

1. 苦しい決断をストレートに伝える
冒頭で彼はこれから苦渋の決断について伝えることを、正直に述べている。
私が自宅から皆さんにお話しするのは7回目です。毎回、良いニュースと悪いニュースを話してきましたが、今日はとても悲しいニュースをお話ししなければなりません。
レイオフについて質問されたとき、私は「全ての選択肢がテーブルの上から外れることはない」と答えてきました。今日、私はAirbnbの従業員の規模を縮小することを認めなければなりません。私たちのように「つながり」をミッションとしている会社にとって、これは非常に困難なことであり、Airbnbを辞めなければならない人たちにとっては、さらに困難なことでしょう。私がこの決断に至った経緯、離職する人たちに向けて提供すること、そして今後起きること、についてできるだけ詳細に共有したいと思います。
スピーチや、こうした社長メッセージは「最初が肝心」である。このオープニングからは、本人にとってもつらい決断であったことが伝わってくる。
そして、このメッセージを最も厳しく受け止めるであろう離職者たちへの共感、配慮がまず最初に示されている。誰の心情をケアすることが最重要であるかがよくわかっている戦略的な始め方、ともいえるかもしれない。
特別な言い方はしていないが、つい常套句で始めがちな我々日本人にとって、参考になるオープニングではないだろうか。

2.「原点に戻る」と伝える
そしてBrian氏は今回のレイオフ判断についての説明を続けるが、その中でも印象的な伝え方があった。
新しい世界での旅行はまた違ったものになるでしょう。Airbnbもそれに合わせて進化する必要があります。人々は、より家に近く、より安全で、より手頃な価格のオプションを求めるようになるでしょう。
しかし同時に、今我々から奪われたように感じるもの、つまり「人と人とのつながり」も強く求めるようになるでしょう。私たちがAirbnbを始めたときに考えたこと、それはまさに一体感を感じること、そして人と人とが繋がること、についてでした。
今回の危機によって、私たちはもう一度原点に立ち返り、基本に立ち返ることになったのです。それはつまり、自宅を誰かのためにホストし、体験を提供したい人達の日常、というAirbnbだけが提供出来るスペシャルなものなのです。
この一節が、今回のメッセージで最も素晴らしいと思った部分の一つである。コロナによって旅行が出来なくなり、Airbnbのサービスが不要になるのではない。そうではなく、人々が求める「人の繋がり」を提供することこそ、むしろ我々の原点なのだとポジティブ転換しているのだ。見事な伝え方ではないだろうか。

3. 誰かを決して責めない
続いて、縮小していく部門について言及していくが、ここにもきめ細やかな配慮が見られる。
今回の決定は、縮小される当該チームの人々の仕事を反映したものではないし、またこれらのチームの全員がAirbnbを離れるということではありません。加えて、Airbnb全体のチームにも影響があります。Airbnbが目指す方向性に対する位置づけに応じて、多くのチームが規模を縮小することになります。
部門の統廃合をするからといって、どこかのチームが悪いとかそういうわけではない。みんなで痛みを分かち合おう、というBrianの組織への愛情、思いやりが感じられる言い回しだ。

4. コアバリューに基づく原理原則を示す
続いて人員削減の詳細の説明に入るが、その前にその指針を先に示している。
人員削減にどのように取り組むかについて、コアバリューに導かれた明確な原則を持つことが重要でした。これらが私たちの指針となる原則でした。
・将来の事業戦略と必要とされる能力に基づき、削減計画を立てる
・影響を受ける人々のためにできる限りのことをする。
・多様性に揺るぎないコミットメントを持つ
・影響を受ける人々との1:1のコミュニケーション持つことに最善を尽くす。
・すべての詳細が明らかになるまで、決定事項の伝達は控える。部分的な透明性はむしろ状況を悪化させる
レイオフというのは、疑心暗鬼や様々な憶測を呼び起こしやすいものである。それに対して、「透明性」や「コミュニケーション」「情報管理の徹底」などをして臨むという配慮がしっかりと示されている。
こうしたセンシティブな判断をする時こそ、「企業理念が最も効果を発揮する場面」だと言える。難しい決断は論理ではなく倫理で決めなくてはいけないからだ。
企業における倫理が、理念である。理念の共有が普段から行われていたかどうかが、こうした局面で問われることになる。
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