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タイ人、インド人にも伝わる理念を武器に「アジアの会社」へ進化する ~インタビューVol.2 菊池英之さん

07 10月.2021

Asian Identityでは、多くの企業で企業理念構築プロジェクトを支援しています。そんな中から今回は、日本、タイ、インドでビジネスを行う精密ダイカストメーカー、KIKUWA (Thailand) 社の菊池社長にインタビューをさせていただきました。

– Philosophyプロジェクトはどのような目的や課題感で実施されましたか?

自社の位置づけの再定義をしたい、という問題意識を持っていました。私たちは日本で生まれましたがその後タイとインドに進出し、今では「日本・タイ・インド」の3拠点の生産体制を強みとして、「アジアでダイカストを生産するならキクワがNo.1である」というポジションを目指しています。

ですが、日本とインドとタイでは言葉も文化も全く違いますから、放っておくと遠心力が働き意識もバラバラになってしまいます。「アジアの会社」として意思統一のとれた会社になるために、「指針」のようなものが必要でした。それが今回策定した企業理念です。

私たちは何のためにその仕事をしているのか?どうやってお客様から選ばれて行くのか?そのために何を意識して日々働くのか?こうした考えが統一されたとき、会社の「核」が明確になり、我々がもっている強みがさらに生きるだろうと考えたのです。

– Philosophyを言葉にしたことで感じる組織や人材の変化はありましたか?

企業理念の浸透は一度やったからおしまいというわけではなく、今後も継続的に行っていかなくてはいけないものではあります。

ですが、現時点を見てみても、今の経営はPhilosophyなしの経営は考えにくい状態になっていると思っています。

理念の中でも行動指針に当たるものを6 Valuesと呼んでいますが、会議室に掲示されている6 Valuesを見て日々リーダーたちが指示を出していますし、方針会議の場では、共通言語として普通に会話の中に出てきます。私がまさに言おうとしていたことが、社員の口から先に出てきて「今、まさにそれを言おうとしてたんだよ」ということをこれまでに何度も経験しました。

今後も6 Valuesをはじめとする企業理念が一人一人の意識に浸透し、空気のように語られるようになるまで活動を続けていこうと思っています。

– 企業理念は、御社のビジネスの成長、事業成果においてどのようなプラスの効果をもたらすのでしょうか?

私たちの製品を取り巻く業界、特に自動車業界はどんどん変化しています。その変化に対応できるように、私たちは常に自分たちをアップデートしていかなくてはいけません。そのために、日々、従業員に目指す姿をコミュニケーションし、変化を促していかないといけません。

その時に、6Valueのようなメッセージは従業員へのコミュニケーションにとても効果的に機能します。例えばProfessional Teamというバリューがありますが、一人一人がプロとして仕事をし、なおかつ効果的にコラボレーションしなさいよ、というメッセージです。こうしたフィードバックをするときに、Valueは必ず役立ちます。

理念とは、ある意味で聖書のようなものです。抽象的ではありますが、抽象的なゆえに変化の多い時代でも本質を突くことが出来ます。

今は、タイからは日本やインドなどの海外拠点に飛んで行って直接指示を出すことが出来ません。会えないときでも、大事な判断をゆだねなくてはいけなときがあります。その際にバリューがあれば、「迷ったら、バリューをもとに判断してください」と言うことが出来ます。細かなところまで具体的な指示を出せなくても、同じ価値観で判断をしてくれれば大きな問題を防ぐことが出来ます。

今後、ますますアジアの会社を目指していくと、ナショナルスタッフに判断してもらうことがどんどん増えていきます。ある意味で、本当のダイバーシティ経営に移行していく時に、企業理念のような共通の羅針盤はまさに必須であると考えています。

– プロジェクトをご一緒した際の、Asian Identityの関わりについて印象に残っていることがありましたらお聞かせください。

まず、Asian Idetity社そのものが、「アジアのHRファーム」という旗を立てて仕事をされている、それゆえにKikuwaと重なっていると感じました。日本からの出張チームではなく、アジアという地域にコミットしながら並走してくれる存在はなかなかないと思います。

日本人とタイ人のチームが、インドまで一緒に行ってくれて企業理念の浸透活動を一緒におこなった事がありました。タイ人がインド人に向けて「同じアジア人」として理念を伝えている。これはなかなか簡単にできることではありません。

インド人もタイ人から学び、タイ人もインド人から学ぶ。これはすごいことで、今までの日本企業にはなかなか無かった取り組みだと思います。ですが、今後はそういう既存の枠組みを超えた活動をしていかないと生き残れない。Asian Identityチームは、自分たちが率先してケースとなって実験してその経験をもとに顧客をリードしていく、という強みがあると思っています。

– 最後に、今後、どのようなことを目指されているか、を教えて下さい。

冒頭にも言いましたが、「アジアの企業」になっていくことを目指しています。そのためには、日本人が指示を出す会社ではなく、多様な国の人々がそれぞれの良さを生かし合う組織を作っていきたいと思っています。

一口に「ダイバーシティ経営」と言っても、とても面倒くさいものです。日本人同士が日本語で話せば、すぐに終わることも多い。でもそれじゃだめなんです。いろんな国と文化の人を集めて、大変だけど一緒にやるんです。そこに絶対に意味があります。

今、世の中はものすごい勢いで変化していますが、インド人の変化への耐性には驚かされるものがあります。我々の強みは、そうした変化に対応するための多様性が社内にあること。そうした組織力を武器に、変化に対して勇敢に立ち向かっていきたいと思います