HR Blog
バンコクを拠点とする組織人事コンサルティングファーム、Asian Identityの藤岡です。
弊社では新型コロナウイルスの影響でwork from home/在宅勤務を実施してすでに1ヶ月以上が経っています。
もちろん今までにない形での仕事の進め方なので始めは慣れないこともあり苦労しましたが、最近は大体の仕事はスムーズに回るようになってきた印象です。
その結果最近考えるようになったのが、「そもそも”オフィス”という場所は何のためにあるのか?」という問いです。
分かりやすくするために”工場”という場所と比較してみたいと思います。
”工場”は何かを生産するために特別な材料、機械や設備が求められるため、それらを一つの場所に集約しています。
そしてそれらは複数人で一つの機械や設備を使用するため、人がその機械や設備がある”工場”という場所に赴きます。
一方”オフィス”という場所で働く弊社社員が使用しているものは突き詰めると、電話とパソコンくらいのものです。
それらは一人一台使用しますし、場所の制約はありません。
基本的に機能としては電話もパソコンも家で使おうがオフィスで使おうが電話でありパソコンとして使用できます。
これは、そもそも大きさや動作環境の問題で家で使用することなど考えることもできない製造業の機械とは好対照です。
そう考えると、条件的には”オフィス”の存在には必然性はないように思えます。
それでは”オフィス”は一体何のためにあるのでしょうか?
今回の記事では「環境面」「コミュニケーション面」「精神面」の3つの角度から考えてみたいと思います。
環境面
それぞれの人にとって働きやすい環境は様々で画一化は難しいものです。
快適と感じる空調の温度、集中できる明るさや照明の色、一番仕事がはかどる時間、効果的な休憩の取り方…
例えば僕の場合、(タイではあるあるですが)オフィスの空調は寒すぎます。
常に上着を着る必要がありますし、時には上着を着ても寒い時があります。
結果として体が縮こまって、背中や腰が痛くなり、仕事の生産性に悪影響が出ます。
一方、最近の在宅勤務だと空調の設定温度は自分次第なので暑すぎず寒すぎないちょうどいい室温に設定できています。
そう考えると、”オフィス”という場所は「個人個人の生産性を最大化する」ようにはできていないように思えます。
ただし、だからといってオフィスに環境面の価値がないわけではありません。
オフィスの環境に不満がないわけではないがそれでも自宅よりはマシ、と感じる方も多いのではないでしょうか。
つまり、オフィスは「個人個人の生産性を最大化する」ようにはできていませんが、「全員にとって最低限の働く環境を担保する」という役割は担っていると言えそうです。
コミュニケーション面
オフィスに皆が集まって仕事をすることのメリットとしてよく上がるのは、コミュニケーションが生まれやすくなるという点です。
実際オフィスで隣に座っている人に話しかけるのと、伝えたいことを文章にし、時には言葉遣いにも気を配りながらメッセージを送るのでは前者の方がはるかに簡単です。
そしてチームのメンバーの間に十分なコミュニケーションがあることはもちろんチームとして協働するうえでは欠かせません。
ただし、簡単に発生するコミュニケーションが個人の生産性にとって良いことなのか、という点は議論の余地があります。
人間が集中するには一定の時間がかかります。そしてせっかく集中モードに入れたとしても隣の席の同僚に話しかけられるとその集中は途切れかねません。
ランダムなコミュニケーションが生まれることを目指して作られたフリーアドレス制のオフィスでは生産性が下がってしまったという事例もあります。
実際のところ、この「コミュニケーションが簡単に生まれる」ということがどれほど”望ましいこと”とみなされるかは、仕事内容やメンバーによるところが大きいかと思います。
クリエイティブさが重要であったり、状況が目まぐるしく変わる中でチームで対応していかなければいけないような仕事の場合は”望ましい”とみなされるかもしれません。
一方で会計などの正確さが求められるような仕事や、深く顧客について洞察をしていかなければならないような仕事の場合、むしろ”集中を阻害する”とみなされるかもしれません。
つまり、オフィスというのはコミュニケーションを生まれやすくする効果はあるが、それが果たして本当に”望ましい”ことかは一概には言えない、ということではないでしょうか。
精神面
オフィスがあると決まったメンバーがほぼ毎日のように直接そこで顔を合わせることになります。
また、それだけでなくオフィスに行くと会社のロゴを毎日目にすることにもなるかもしれません。
こういったことはすべて ”ここにいる人間はみな同じ組織に属している” という思いを強めることに繋がります。
従って、オフィスには組織のメンバーの一体感を強化するという機能はあるように思えます。
ただし、営業で常に外回りをしている人(オフィスにいない)や、グローバルに様々な拠点を持つ会社の社員一人ひとり(違った場所のオフィスにいる)もやはり一つの会社に属しているという思いを持っているでしょう。
従ってオフィスというのは組織のメンバーの一体感を強化する機能は持ちますが、当然ながらオフィスだけが皆に一体感を抱かせるわけではありません。
強力な組織理念や組織文化、あるいは明確なビジョンといったものも同様に人々の間に皆が同じ組織に属しているという思いを持たせることにつながるでしょう。
まとめると”オフィス”という場所は、一般的には、環境として仕事をするうえで最低限の環境を皆に提供し、コミュニケーションを生まれやすくし、皆が一つの組織に属している思いを強めるという機能がありそうです。
(もちろん組織や業種によってはそれ以上の機能を持つ場合もあるかもしれません。)
ただ個人的には、逆にオフィスを排し、会社はオフィスの家賃の代わりに個人個人が自分に合った働きやすい環境を作れるように各社員をサポートし、コミュニケーションは適度なレベルに留めることで集中して仕事ができるようにし、場所ではなく企業理念や企業文化によって一体感を醸成する、という形も面白いと思ったりもします。
もちろん、実際にはオフィスをどうこうする、という話は現実味がなく新型コロナが終息すると元通りオフィスで働くことになる場合がほとんどだとは思います。
ただ、せっかく今特殊な環境にあるので、普段は当たり前だと思いがちな”オフィス”という存在を改めて考え直し、在宅勤務明けにはどのような効果を狙って”オフィス”という場所を設けるのか・活用するのかを改めて考えてみてもよいのではないでしょうか。
改めて、皆さんの組織に”オフィス”は必要ですか?
必要だとすると、どのような機能があるから必要なのでしょうか?
Photo Credit: Arlington Research on Unsplash
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