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パリから学ぶ組織文化の作り方

13 9月.2021

「パリでは洗濯物を外から見えるところに干してはいけない」

 

これは僕が今泊まっているパリの Airbnb の宿のホストの方から言われた言葉です。

(弊社ではロケーションフリーワーキングという働き方があり、実は今それを使いフランスのパリから働いています。)

 

さて、上記の言葉ですが、これは僕が自分で手洗いで洗濯をし(コインランドリーを使うと高くつくので)、それをそのまま借りている部屋のベランダに干していたところ、それを見たホストから言われたものです。

彼女が言うことには、「パリでは景観を守ることがとても大事にされている。そして洗濯物はパリの景観を損なうものである。なので洗濯をする際はコインランドリーで洗濯をし乾燥機まで使うか、自分で洗濯をする際は家の中で干してほしい」とのことでした。

 

日本、あるいはタイでもこのような制限は全くないため、言われた直後はとても戸惑いました。

ただ改めて通りを歩いてみると、確かに洗濯物をベランダに出している部屋は一切ありません。そればかりか、通りに向けて見える形で花を育てている部屋が多くあることに気づきました。

そして、それらによって本当に美しい景観が作られていることを実感しました。

 

こうして、初めは「洗濯物を自由に干せないなんて、なんと不自由なんだろう。面倒くさい。」というふうに思っていた気持ちも、「この綺麗な街並みをつくる一つの助けになるのであれば、多少の不便は我慢しても協力したい」と思うようになりました。

 

 

さて我々は組織人事コンサルタントとして様々な企業様のお手伝いをさせていただきますが、「企業の文化を変えたい」あるいは「組織の雰囲気を○○にしたい」といったご相談をいただくことも多いです。

 

例えば、誰もが自由に意見を言えるような文化、組織の中の人が互いが互いを切磋琢磨し合うような雰囲気、あるいは、ホウレンソウが十分になされ情報が回る組織を作りたい、などです。

 

それを作り出すために一般的に実施していくこととしては次の通りです。

まず、作りたい望ましい状況を定義します。ここでは例えば、企業理念を再整理したり、改めて新しいものを作ったりした上で、それを言語化したり視覚化したりといったことです。

そして次に、そこで整理されたものをいわば定規として、望ましい行動とそうでない行動を明確化し、望ましい行動を取っている人は褒め、そうでない行動は注意をしていきます。

 

 

ただ、今回のパリでの洗濯物のケースを通して気づいたことは、ただただ「景観を損ねるから」という“理由”を説明されても、心からそのルールに従おうとは思わなかっただろう、ということです。

本当にルールに従おうと思わせたのは、その景観の美しさそのものでした。

実際にその景色の素晴らしさを体験し胸打たれたからこそ、自分からその文化を守る一助になろうという気持ちが生まれました。

 

 

そしておそらく、企業の文化や組織の雰囲気についても同じことが言えるのではないでしょうか。

ただただふさわしい行動や望ましい振る舞いの“理由”を説明しているだけでは、実際の心からの行動や振る舞いを起こすことは難しいかもしれません。

 

本当の心からの行動や振る舞いを起こすのは、実際にその文化や雰囲気の素晴らしさを身を以て体験したときではないでしょうか。

 

従って、企業や組織において何かしらの新しい文化を作りたい場合、それを定義し、言語化し、具体化していくことは大事かもしれませんが、それ以上に大切なのは擬似的にでも実際に皆にその素晴らしさを体験してもらうことかもしれません。(例えば実際のお客様からの反応を共有する、創業時のストーリーを語るなど)

 

そしてこれこそが、人々がただのルールとして企業や組織の望ましい行動様式に従うか、自分からそのような行動を起こしていくかの分岐点になるかもしれません。

 

様々な組織変革を起こそうとしている皆様、それをいかに具体化していくか、という観点に加えて、いかにそれを体験してもらうか、という点もとても大事なのかもしれません。

 

 

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Photo by JOHN TOWNER on Unsplash