Our Works
Asian Identityではタイおよび東南アジアで事業を行う様々な企業様の人材・組織の成長をサポートするプロジェクトを行っています。
今回は、タイにおいてプラスチック製品の製造・販売を行うASAHIKASEI PLASTIC (THAILAND)のManaging Director, 星野さんに、数年にわたって取り組まれている企業文化の変革プロジェクトについてのお話を伺いました。
ー 星野さんは2018年にタイにご着任されましたが、その時のタイの組織の状態をどのようにご覧になっていましたか?
着任時の課題として言われていたこととして、離職率の高さがありました。弊社は20年近くタイで事業を行っている会社ですが、工場のオペレーターの離職率が高い会社でした。3割くらい、時には4割くらいになることもありました。
離職率が3割あると、3年で人が入れ替わってしまうということになります。それでは組織としての知恵が蓄積できない、そういう課題感がありました。
当時は製品のクレームもあり、また、いわゆる労災のようなこともちょこちょこ起きていました。安全管理はすべてに優先されますので、そこをしっかり改善していかないといけない。そんな思いでタイでの仕事に取り組みはじめました。
ー そんな中で、「6Belief(6つの信念)」を策定し、組織変革や従業員教育に取り組んでこられました。どのようなことが印象に残っていますか?
まず、プロジェクトに日本人も入って、マネージャークラスと一緒になって活動したことがよかったと思います。
様々なアクティビティを行うことを通じて、より日本人とタイ人の関係が近づいた気がします。もちろん普段から業務の中で日常的に話をしたりしていますが、それとは違う場を設けられたと思います。
6 Beliefについては色んな場で意識して使ってくれているように思います。
その一つに「Caring(相手を理解し、気配りをする)」というものがあります。リーダーは相手の気持ちをケアできる人物でなくてはいけないと思っています。最初は項目に入っていなかったのですが、私が自分の考えを伝えて、6Beliefsに取り入れてもらいましたが、少しずつ意識をしてくれているなと思います。
特にこの2年くらい、コロナの問題があってマスクやアルコール消毒の準備など、色々なコロナ対応の問題がありました。在宅勤務をどう導入するか、などについても様々な議論を重ねて、方針を決めていく必要がありました。
そういう場面で、「会社は従業員をケアしたいんだよ」というメッセージを出す機会が増えましたが、徐々にマネージャーの人たちが「自分たちの言葉で」そういうことを言ってくれるようになり、彼らにはとても感謝しています。
今は安全行動レベルを上げるためにお互いに指摘しあおうと言っていますが、そこでもCaringの気持ちを持ちながら言おうね、という形で使っています。
一方でこうした価値観はマネージャー陣には浸透していると思いますが、一般スタッフのところまではまだなじみ切れていないとも思うので、それは今後の課題だと思っています。
ー組織が変化してきたな、と感じる点はありますか?
マネージャークラスは非常に落ち着いて、それぞれの役割をまっとうしてくれるようになりました。また、マネージャー間のやり取りもスムーズになったように思います。この数年の間に新しく会社に入った人の割合も増えてきましたが、そういう人同士の関係もできました。結果として離職率は1割くらいになりました。
ひとつの例で行くと、弊社では毎年ドラッグテストをやっています。去年までは数人はテストに引っかかる人がいました。もちろんそれぞれに色々な背景がありますが。それが今年は初めてゼロになり、みんなで喜びました。安全問題もゼロにはなっていませんが、着実に減ってきています。
ー組織を変革していくうえで、どういうところがポイントだと思いますか?
着任した当初「タイはヒエラルキーを作りたがる人が多い」のかなという印象を持ちました。
例えば会社の行事をいろいろやるんですけど、その中で準備とかおぜん立ての時にヒエラルキーがもう出来てしまっている。日本人はここに座って、みたいな。これは、タイ人同士の間でも同じです。こうした部分を少しずつ変えて、風通しを良くして行くことが大切だと思いました。
数年間かけて色んな研修を通じて一緒にやることで、過度なヒエラルキー意識は減ってきたように思います。
タイ人同士の風通しについても良くなってきたと思います。一つの理由は離職率が下がったことで、人の出入りが少なくなったことが大きいです。以前は、あの人は誰?というのが常にあったのでどうしても深いコミュニケーションが難しかった。今はそれが減ってきているので、タイ人のスタッフの中でも安定した感じが作れ始めているんじゃないかと思う。
ー今後についてはどのようなことに取り組んでいかれますか?
職場間でのローテーションや、評価システムなどの整備をしていきたいと思っています。色々な制度を今後もトライ&エラーをして、日本人が口を出さなくてもいいような組織にしていきたいと思っています。
この数年でタイ人のマネージャー層が育ってきましたが、今はそのさらに次の世代を育てていかないといけないと思っています。育った世代がまた次の世代を育てるような、自発的に育成が回っていくような仕組みができることを実現していきたいと思っています。
ープロジェクトをサポートさせていただいているAsian Identityについてはどのような印象を持たれていますか?
以前は別の会社に依頼していましたが、その後AI社に依頼させていただくことにしたが、いい意味で意見交換をさせて頂けるパートナーだと思っています。
こちらがこうしたい、ということの思いを聞いて、融通をきかせて支援をしていただいている。先ほどの6 Beliefを作るプロセスなどもそうですが、こちらの意見を踏まえてアウトプットをして下さっていると思います。決まった手法や理屈をお仕着せるのでは無く、まさにコンサルして頂いてると感じています。これからも期待しています。
ー貴重なインタビューの機会をいただき、ありがとうございました。
今後日系企業の海外法人を取り巻く環境は激変していくことは間違いないですが、「社員を大切にすることで、業績を高める」というアプローチは日本企業が培ってきた伝統であり、隠れた強みの源泉ではないかと思っています。
Asian Identityチームはタイ・東南アジアの人材の能力の最大化による経営品質の向上を引き続きサポートしてまいります。
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